江戸堀印刷所

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プラテン印刷機

江戸堀印刷所では、通りがかりの方にも間近で見ていただけるように、
窓側から一番近い場所に活版印刷機を置いています。

これは1960年代につくられたハイデルベルグ社の「プラテン」という西ドイツ製の活版印刷機で、現在はもう生産されていません。
ハイデルベルグ社はドイツ老舗印刷機メーカーで、今でも大きなオフセット印刷機をつくっている業界では有名な企業です。

江戸堀のプラテンは展示しているだけではありません!
実際に活版印刷の注文をいただければ、この場所でガンガン動かして印刷しています。動いている時はもちろん外からも覗いてもらえますし、自分の印刷物が刷られているところも立ち会って見ていただけます。

活版印刷は、凹みや手触り感が出るのが醍醐味で、オフセットでは印刷できないコースター等の1mm程の厚紙にも印刷できます。
そしてこのT型プラテンはA4サイズ位まで印刷可能なので、名刺、カードの他にも小冊子の表紙だけ活版印刷ということもでき、オフセットやピンクマスター印刷との組み合わせもできます。(ピンクマスター印刷については、また別の記事でご案内します!)

プラテンは印刷だけではなく、“型抜き”に使用される場合もあります。
(江戸堀では印刷専用です)

ちなみに関西では“型抜き”のことを「トムソン抜き」と呼ぶことが多いのですが、関東では「ビク抜き」というそうです。
ビクは聞き慣れないのでへんな感じがします・・・
それぞれ、米・トムソンマシン社、独・ビクトリア印刷機が語源らしいのですが、適当に略した呼び方が定着してしまっているのが業界用語のおもしろさですね。

開いていれば、気軽に入ってきてください!

■プラテン印刷機 T型(ハイデルベルグ社製)

アダナプレス(小型活版印刷機)

工房内にはいくつか機械がありますが、
まずは この印刷所をつくるきっかけにもなった
プラテン小型活版印刷機「Adana-21J」の紹介をします。

タイポグラフィ関連の書籍を扱う出版社でもある朗文堂さんが
復刻版として製造・販売されている印刷機。

この「Adana-21J」は新たに国産として製造するために、

1970 年代初頭にイギリスから輸入されたAdana Eight-Fiveがモデルと

なっていて、ボディは渋いブリティッシュ・グリーン。
置いているだけでもかわいく、使うとなお楽しいです。
朗文堂の片塩さんと大石さんはほんとうにすごい方たちです。

このタイプの小型活版印刷機は、
日本に導入された当初(明治初期)は足踏み式だったことから
最初は「フート印刷機(foot press)」と呼ばれ、
それが手動となり現在では「手フート」または「手キン」と
呼ばれるようになったという変遷があるそうです。
おかしな呼び名ですよね。
昔のなごりを感じる業界用語っておもしろいです。

今ではいろんな印刷方法がありますが、
活版印刷は、なにより印刷の原点です。
それを誰にでも一番わかりやすい形で伝えられる印刷機として
置いておきたいという思いで購入に至りました。
2007年4月の発売と同時に勇み足で申し込んだので、
実はシリアルナンバーが「0001」という貴重な一台なんです。 
これをいつか目に見えるところに展示して、たくさんの人に
印刷の原点、おもしろさを知ってもらいたいと思いながら、
会社の隅にひっそりと置かれたままになっていました。
それから早4年の年月が過ぎた2011年、
ようやくお披露目できる工房が完成したわけです。
活字を使って、アダナで印刷してみました。
デジタルデータではなかなか表現できない、なんともいえない書体が
素朴でやさしいです。